Ⅰ シュミット研究
古賀敬太著『カール・シュミットとその時代』(みすず書房、2019年)
カール・シュミットの生涯を「国法学者」としての役割に着目し、ビスマルク帝国からワィマール共和国を
経て、戦後ドイツまで、彼がいかに緊急権を強調して、国家の危機を救おうとしたかを跡づける。しかし、彼の「例外状況」や「緊急権」理論は、国家の統一やリベラル・デモクラシーにとって両刃の剣である。
古賀敬太著『シュミット・ルネッサンス』 ーシュミットの概念的思考に即して』(風行社、2007年)
欧米では、Ch・シャンタル・ムフ、A・ネグリ、J・アガンべン、J・デリダなどによって、特に左派からシュミット・ルネッサンスが生じた。こうした状況下で本書は、シュミットの政治、国家、主権、憲法制定権力、独裁、戦争、市民、国民概念を解明し、そのその魅力と問題点を指摘した。
古賀敬太著『カール・シュミットとカトリシズムー政治的終末論の悲劇』(創文社、1999年)
本書は、シュミットの政治思想をカトリシズムの思想的文脈に位置づけて、その特殊性を終末論に求める。この終末論における極度の緊張から、彼の友・敵理論や自由主義批判が帰結する。特に彼は、終末における「カテコーン」(止めるもの)に着目し、終末における混乱と無秩序を克服する役割を国家に求めた。
*なおこの書物は、現在講談社が扱っています。
C・shmitt関係著作・翻訳
古賀敬太著『ヴァイマール自由主義の悲劇ー岐路に立つ国法学者たち』(風行社、1996年)
本著では、ヴァイマール共和国の代表的国法学者であるC・シュミット、H・ケルゼン、E・カウフマン、R・スメント、H・ヘラー、G・ライプホルツ、G・アンシュッツ、R・トーマがヴァイマール共和国の危機的状況において、どのように国家の権威を確立しつつ、自由民主主義に対処したかを考察する。ヴァイマール共和国においては、民主主義は市民権を獲得していたが、自由主義は右や左の双方から非難された。特にシュミットにとって、自由主義は、国家の権威を弱体化させると同時に、民主主義の進展を阻止するものに外ならなかった。ヴァイマール共和国においては、自由主義の伝統や精神はまさに衰退し死滅しつつあった。今日のポピュリズムにおいても、個人の権利や権力の分立、法治国家といった自由主義の遺産が民主主義に対する障害として非難され、非自由主義的民主主義が唱えられている。本書は、自由主義なき民主主義の危険性を警告するものでもある。
初宿正典・古賀敬太編『カール・シュミットとその時代ーシュミットをめぐる友・敵の座標』(風行社、1997年)
本書はカール・シュミットと同時代人の国法学者や思想家の人的・思想的関係に焦点を当てて、友・敵関係の視点から考察した貴重な論文集です。以下の構成と執筆者ですが、敬称・所属は省略しています。
【 第一部 シュミットと国法学者たち」
1高田篤ーシュミットとケルゼン
2 渡辺康行ーシュミットとスメント
3 山崎充彦ーシュミットとヘラー
4高橋愛子ーシュミットとヘラー
5初宿正典ーシュミットとカウフマン
6中道寿一ーシュミットとフレンケル、キルヒハイマー
【第二部 シュミットと現代思想家】
1 宮本盛太郎・堀口良一シュミットとソレル
2佐野誠ーシュミットとヴェーバー
3古賀敬太ーシュミットとギュリアン
4川合全弘ーシュミットとユンガー
5谷喬夫ーシュミットとハーバーマス
ヘルムート・クヴァーリチュ著『カール・シュミットの立場と概念ー史料と証言』(宮本盛太郎・初宿正典・古賀敬太訳、風行社、1992年)
原題:Helmut Quaritsch,Positionen und BegriffeCarlSchmitts,
2.Auflage,1991
本書の著者は、ドイツのシュミット研究を牽引したH・クヴァーリチュで、彼は、1986年にシュミットの国際会議をシュパイアーで主催し、”Comolexio Oppositorum-Ueber Carl Schmitt.(Duncker &Humblot,1988)を刊行している。『シュミットの立場と概念』は、シュミットの思想的生涯を跡づけた研究書であり、豊富な資料を渉猟して、シュミットの思想の特質をカトリック、国家主義者、ナショナリストとして分析している。著者のもともとの研究対象はJ・ボダンであり、『主権論(Souveraenitaet,1986)という著書がある。古賀は、クヴァ―リチュ教授から欧米におけるシュミット研究の現状について多くのことを教えられた。日本に来られた折には、広島の原爆資料館に案内した思い出がある。
C・シュミット関連著作・翻訳
ジョーゼフ・W・ベンダースキー『カール・シュミット論ー再検討の試み』(宮本盛太郎、古賀敬太、川合全弘訳、御茶の水書房、1984年)原題:Joseph.W.Bendersky,Carl SchmittーTheorist for the Reich、1983)
本書は、豊富な資料を駆使して、従来のワィマール共和国の破壊者としてのシュミット像を批判し、シュミットをワィマール共和国の救済者として位置づける問題の書である。著者は、同時にシュミットを「保守革命」の思想家ではなく、「理性の共和派」に位置づける。著者は、シュミットのナチズムへの関与を批判するものの、1936年以降、シュミットがSSに攻撃され、失脚したことを強調する。
本書の構成
第一章「カトリックの遺産、教育、国家」
第二章「政治意識、民主主義、独裁」
第三章「一大学教授の性格と前進」
第四章「議会主義対大統領権力」
第五章「友・敵理論と不可侵の憲法」
第六章「憲法の番人としての中立的権力」
第七章「大統領政府をめぐる論争」
第八章「合法性、中立性、現実性ー憲法、裁判所、ナチス」
第九章「憲法のディレンマとヒトラーの合法的権力掌握」
第十章 「第三帝国の『桂冠法学者』」
第十一章「イデオロギー的偏向のパージ」
第十二章「沈黙の安全?広域理論からニュルンベルクへ」
エピローグ
古賀敬太・佐野誠編訳『カール・シュミットの時事論文集-』ヴァイマール・ナチズム期の憲法。政治論議』(風行社、2000年)
本書は、シュミットの時事論文をテーマごとに訳出し、時代状況の変化にシュミットがどのようにイデオロギー的、また国法学的に対応したかを明らかにしている。本書の構成は以下の通りである。
第一章「シュミットの議会解散論と大統領選挙に対する態度」
第二章「シュミットの緊急権に対する見解」
第三章「シュミットの全体国家論」
第四章「シュミットとパーペン・クーデター」
第五章「シュミットの法治国家論」
第六章「シュミットとナチズムの法意識」
第七章「第三帝国におけるシュミットの友・敵思考の展開」
第八章「シュミットの反ユダヤ主義」
シャンタル・ムフ編『カール・シュミットの挑戦』(古賀敬太・佐野誠編訳、風行社、2006年)原題:Chantal Mouffe(hrsg.)The Challenge of Carl Schmitt,Verso、1999)
本書は、「シュミットと共に、そしてシュミットに抗して考える」論文集であり、シュミットの鋭利な自由主義批判を継承すると同時に、他方において友・敵対立を「闘技的的デモクラシー」に変化させることによって、多元的デモクラシーを救出しようとするものである。シュミットの自由主義批判は継承するものの、シュミットの危機克服の処方箋は「否」とする、左翼からのシュミット継承が典型的に示されている著書である。
本論文集の構成は以下の通りである。
第一章 ポール・ハースト「カール・シュミットの決断主義」
第二章 スラヴォィ・シジク「ポスト政治時代におけるカール・シュミット」
第三章シャンタル・ムフ
「カール・シュミットと自由民主主義のパラドックス」
第四章ジャン=フロンソワ・ケルヴェガン「カールシュミットと『世界統一』
第五章ディビッド・ダイゼンハウス「国家への信頼の回復」
第六章ジュージ・E・ドティ「カールからカールへ」
第七章ダリゴリス・アナ二アディス「カール・シュミットとマックス・アドラー」
第八章カトリーヌ・コリヨ=テレ‐ヌ「カール・シュミット対マックス・ウエーバー」
第九章ウルリッヒ・K・プロイス「政治的秩序と民主主義」
第十章アゴスティ―ノ・カリーノ「カール・シュミットとヨーロッパ法学」
Ⅱ.政治思想関係
富沢克・古賀敬太編『二十世紀の政治思想家たち』(ミネルヴァ書房、2002年)
20世紀の政治思想家たちは、啓蒙主義の主観主義・合理主義を批判しつつ、間主観主義や差異性を強調し、寛容な共同体形成を試みた。他方、個人主義や自由主義をトータルに批判し、ファシズムや共産主義に接近する思想家もいた。
ここでは、取り上げる政治思想家は以下の通りである。(敬称・所属は省略)
1 ゲオルグ・ジンメル、執筆者:荻野雄
2 エルンスト・カッシーラ、執筆者:馬原潤二
3 ジャック・マリタン、執筆者:古賀敬太
4 モーリス・メルロ=ポンテイ、執筆者:富沢克美
5 ハンナ・アーレント、執筆者:森川輝一
6 アイザィア・バーリン、執筆者:濱真一郎(同志社大学)
7 フリードリヒ・A・ハイエク、執筆者;山中優
8 ジャン=ポール・サルトル、執筆者、長谷川一年
9カール・シュミット、執筆者:竹島博之
古賀敬太著『政治思想における自由の伝統』(晃洋書房、(2002年)
本書は、「自由」概念を縦軸とし、近代の政治思想の特徴を描いたものである。取り上げる思想家は、第一章「マルテイン・ルター」、第二章「ジョン・カルヴァン」、第三章「ジョン・ミルトン」、第四章「トーマス・ホッブス」、第五章「ジョン・ロック」、第六章「ジャン・ジャック・ルソー」、第六章「ジョン・スチュワート・ミル」である。
近代自由主義の伝統は、「自由」と「放縦」を区別し、権力からの自由と人権を強調すると同時に、内なる放縦を規制する積極的自由を強調し、他者との連帯を主張した。しかし、放縦=自由という自由概念に依拠するホッブスは、放縦から生じるアナーキーを恐れ、権威主義的な国家の樹立に走らざるをえなかった。
本書は、リベラリズムの中核にある自律的な人間による共同体形成に注目し、その礎石ともいうべきキリスト教的信仰に光を当てた。神と垂直的に交わり、他者に対して心が開かれているキリスト教的人間観に依拠することによって、私たちは一方における過度の個人主義、他方における個人の自由や人権を縛る排他的な共同体主義に対抗することができる。
古賀敬太著『コスモポリタニズムの挑戦ーその思想史的考察』(風行社、2014年)
本書は、経済や政治のグローバル化に伴い世界の相互依存が進むにあたって登場してきた「コスモポリタニズム」(世界市民主義)と国民国家に依拠するナショナリズムとの対話を試みたものである。
コスモポリタニズムに属する思想家として、本書はJ・マリタン(自然法論的コスモポリタニズム)、M・ヌスバウム(共感的コスモポリタニズム)、D・ヘルド(コスモポリタン・デモクラシー)、J・ハバーマス(法制的コスモポリタニズム)、T・W・ポッゲ(分配的コスモポリタニズム)を紹介している。他方において国民国家の側に立つ思想家として、C・シュミット、J・ロールズ、M・ウォルツ゚ァーそしてD・ミラーのコスモポリタニズム批判をとりあげてている。
対話を通して明らかになるのは、国民国家を無視したコスモポリタニズムは非現実で脆弱である反面、コスモポリタニズムを無視したナショナリズムは、排他的的で危険である。
古賀敬太著『政治思想の源流ーヘレニズムとヘブライズム』(風行社、2010年)
本書は、西洋政治思想史を貫いている二つの思想潮流であるヘレニズム(人間中心主義)とヘブライズム(神中心主義)の伝統の内、ヘブライズムの再興という視点から、古代・中世の政治思想を概観したものである。
構成は、第一部「旧約聖書の伝統」、第二部「古典古代の政治思想」、第三部は「キリスト教の政治思想」である。特に古代から中世に至るキリスト教の政治思想では、ヘブライズムとヘレニズムが相互に対立したり、アウグスチヌスやT・アクイナスにみられるように融合する経緯を辿ることになる。そして近代においては、一方に於てはルターやカルヴァンの宗教改革、他方においてはレオナルド・ダ・ヴィンチやミケランジェロの作品における古典古代のルネッサンスとして分化して展開することになる。
上述の著書では、特に政治思想におけるヘブライズムの伝統を強調した。その際、M・ウォルツアーの一連の著作から刺激を受けた。
古賀敬太・長谷川一年編
『岐路に立つ民主主義』
(法政大学出版会、2026年)
目次
序論
第一章「マックス・ヴェーバー」ー
人民投票的民主主義の構想とカリスマへの距離
(佐野誠)
第二章「カール・シュミット」ー自由主義なき民主主義の危険性(古賀敬太)
第三章「ハンス・ケルゼン」ー個人の政治的自律と教養教育代表制(松本彩花)
第四章「ジョルジュ・ソレル」ー民主主義批判から道徳的秩序の再生へ」(長谷川一年)
第五章「アイザイア・バーリン」ー民主主義的自己支配への警戒と道徳的秩序の再生へ」(濱真一郎)
第六章「ハンナ・アーレント」ー代表制批判から民主主義の再定義へ」(和田昌也)
第七章「チャールズ・テイラー」ー民主主義・承認の政治・多文化主義」(千葉眞)
第八章「ユルゲン・ハバ―マス」ー熟議民主主義像と公共圏論」(大村一真)
第九章「レオ・シュトラウス」ー民主主義と政治哲学の使命」(松尾哲也)
第十章「ジョン・ロールズ」ー政治的リベラリズムと政党政治の擁護」(田中将人)
第二章
ここで自分についてや事業内容、特筆したいポイントなどを紹介しましょう。長くなりすぎないよう簡潔にまとめるとよいでしょう。
『政治概念の歴史的展開』の【日本編】は、米原謙編著で、第9巻(2016年)と第10巻(2017年)が刊行されています。
第九巻『天皇から民主主義まで』
収載概念:天皇、神道、公論、道、国体、家、性、政体、社会、権利、政党、民主主義
第十巻『まつりごとから市民まで』
収載概念:まつりごと、戦争、平和、経済、理と利、自由、近代、アジア(亜細亜)、植民地、社会主義、市民
3.『政治概念の歴史的展開』【西欧篇】(第8巻)1~6,8巻 古賀敬太編 7巻 押村高編(敬称、所属は省略)
古賀敬太編著『政治概念の歴史的展開』第一巻(晃洋書房、2004)
取り挙げる概念、執筆者
*自由:木部尚志
*平等:的射場敬一
*友愛:渡邉雅弘
*人権:濱真一郎
*寛容:大澤麦
*正義:渡辺幹雄
*公共性:森川輝一
*権力:早川誠
*国家:古賀敬太
*官僚制:佐野誠
*市民社会:岡本仁宏
*連邦主義:千葉眞
古賀敬太編著『政治概念の歴史的展開』第二巻(晃洋書房、2007)
取り挙げる概念、執筆者
*政治:早川誠
*国民・岡本仁宏
*契約:佐野誠
*主権:古賀敬太
*支配:牧野雅彦
*独裁:竹島博之
*革命:堀田新五郎
*戦争:内藤葉子
*共通善:菊池理夫
古賀敬太編著『政治概念の歴史的展開』第三巻(晃洋書房、2011)
取り挙げる概念、執筆者
*徳:木村俊道
*平和:寺島俊穂
*共同体:菊池理夫
*ナショナリズム:富沢克
*パトリオティズム(愛国心)
*コスモポリタニズム:古賀敬太
*抵抗権:清滝仁志
*専制:石崎嘉彦
*例外状態:竹島博之
古賀敬太編著『政治概念の歴史的展開』第四巻(晃洋書房、2015)
取り挙げる概念、執筆者
*人間の尊厳;古賀敬太
*市民:的射場敬一
*フロネーシス(知慮):荒木勝
*権威:寺島俊穂
*帝国:木村俊道
*環境:丸山正次
*ユートピア:菊池理夫
*終末論:千葉眞
古賀敬太編著『政治概念の歴史的展開』第五巻(晃洋書房、2013)
*自由主義:富沢克
*フェミニズム:内藤洋子
*政治と宗教:木部尚志
*政治教育:井柳美紀
*市場:山中優
*啓蒙:馬原潤二
*テロル:長谷川一年(同志社大学)
*連帯:田畑真一
*所有:青木裕子
古賀敬太編著『政治概念の歴史的展開』第六巻【憲法編】(晃洋書房、2013)
*憲法:佐野誠
*デモクラシー:杉田敦
*立憲主義:的射場敬一
*君主制:木村俊道
*混合政体:犬塚元
*信託:下川潔
*議会:寺島俊穂
*政党:野口雅弘
*選挙:岡崎晴輝
*世論(輿論・公論):岡本仁宏
*政治腐敗:蓮見二郎
*シティズンシップ:山崎望
押村高編著『政治概念の歴史的展開』第七巻【国際篇】(晃洋書房、2015)
*国家主権:押村高
*外交:木村俊道
*グローバル正義:神島裕子
*国際法:松森奈津子
*国際秩序:高橋良輔
*現実主義:西村邦行
*安全保障:内田智
*帝国主義:前田幸男
*自由貿易:青木裕子
*勢力均衡:岸野浩
*国際語:寺島俊穂
古賀敬太編著『政治概念の歴史的展開』第八巻(晃洋書房、2015)
*民族:加藤節(
*エートス:柳父圀近
*共観:井柳美紀
*想像力:鏑木正彦
*教会:田上雅徳
*名誉:鹿子生浩輝
*自然:森川輝一
*理性:萩原能久
*神話:馬原潤二
4.キリスト教・聖書関係の著作・翻訳
ブロードベント『信徒の諸教会ー初代教会からの歩み』(古賀敬太監訳、伝道出版社、1989年)
原題:E.H.Broadbent,The Piligrim Church,1835.
本書は、初代教会から19世紀のブレザレン運動の歴史を辿りながら、いかに新約聖書の示す「教会」(エクレシア)が変質し、国家権力と結びつき、人間の支配する制度となっていったかをリアルに描くと同時に、歴史上、新約聖書の教会=初代教会を回復しようと試みる改革運動が一貫して存在してきたことを豊富な資料を用いて紹介している。著者の教会観は、次の四つに要約される。
- 神の言葉である聖書のみを教会形成の基準として受け入れ、初代教会を模範とする。
- おのおのの地域教会の独立性を重んじ、中央集権的な教会制度を否認する。
- イエス・キリストのみを教会の頭と仰ぎ、教会における聖霊の導きと支配を強調する。
- 聖職者主義に対して万人祭司説の徹底を主張する。
ロバート・P・エリクセン『第三帝国と宗教ーヒトラーを支持した神学者たち』(古賀敬太・木部尚志・久保田浩訳、風行社、2000年)
原題:Robert、P Ericksen,Theologians under Hitler-Gerhard Kittel,Paul Althaus and Emannuel Hirsch,1983)
ドイツの神学者でナチズムと戦ったK・バルトやD・ボンヘッファー、そして「告白教会」の存在は、日本でよく知られている。しかし本書では、ドイツ神学の影の側面に光を当て、当時の代表的なルター派の組織神学者P・アルトハウス、E・ヒルシュ、新約学者のG・キッテルのナチス支持の背景と原因を描く。彼らを特徴づけているのは、民族や国家を「創造の秩序」として神聖化する「自然神学」であり、歴史の事象の中に主観的に神の御手や「救済史的出来事」を見る歴史神学である。著者は神学者たちのナチズム支持の間接的原因として、「自由主義神学」の影響があったことを指摘している。自由主義神学における聖書の高等批評によって、キリスト信仰の根幹をなしていた教義や道徳が脅かされ、その間隙を縫って、民族や人種が神学やキリスト信仰に侵入してきたという評価である。
A.D.リンゼイ『オックスフォード・チャぺル講話ーデモクラシーの宗教的基盤』(古賀敬太・藤井哲郎訳、聖学院大学出版会、2001年)
原題:The Nature of ReligiousTruth(1927),"The Good and the Clever"(1945),"St.Paul and Kierkegaard."(1948)
リンゼイは、『民主主義の本質』や『現代民主主義国家』で著名なイギリスの政治哲学者である。彼は、本書に収載されているオックスフォードのチャペル講話で、「宗教的経験」を強調した。彼にとって、キリスト教は、単なる知的な教義や習慣ではなく、人間を根本から変革するものであった。彼にとって「宗教的経験」とは、活けるキリストとの出会いを通して新生を経験し、偉大な力に自らを明け渡すことであった。人生や社会を動かすものは、人間を通して発揮される「聖霊の力」(power of spirit)であり、この「聖霊の力」によって不断に生かされている者のみが、慣習や伝統の牢固とした枠を打ち破り、新しい精神の息吹をもたらすことができる。こうしたキリスト教観は、リンゼイの人生を支え、導いたのみならず、彼の政治哲学や民主主義論を根底において支えているものである。
古賀敬太「内村鑑三と大正デモクラシー」(『内村鑑三研究』 教文館、2026年4月)
ここで自分についてや事業内容、特筆したいポイントなどを紹介しましょう。長くなりすぎないよう簡潔にまとめるとよいでしょう。
NEW!新刊『近代日本プロテスタント史の政治思想ー内村鑑三、植村正久、海老名弾正』
古賀敬太著『矢内原忠雄とその時代ー信仰と政治のはざまで』(風行社、2021年)
内村鑑三の信仰を継承し、ファシズムと戦った矢内原忠雄の生涯と政治思想を描く。矢内原は、新渡戸稲造の教養主義、吉野作造の民本主義、美濃部達吉の天皇機関説、津田左右吉の記紀批判が提唱された大正デモクラシーの思想的影響を受けていた。しかし、大正デモクラシーが満州事変以降ファシズムの嵐にの見込まれていったのに対して、矢内原は、ファシズムに対峙し、戦った。1937年に発生した「矢内原事件」(軍部を批判し、東京帝国大学教授を辞任した事件)はその結果であった。
なにゆえに、矢内原は、ファシズムに対抗できたのか。彼の抵抗の土台は、聖書であり、超越的で、歴史を支配する神への信仰であった。矢内原は目に見える現実をリアルに洞察すると同時に、その背後にある「目に見えない神の現実」に目をそそいでいた。
矢内原にとってキリスト教とは、人間の罪を贖うために十字架にかかり、三日後に復活してイエス・キリストに対する人格的な信仰であった。同時に矢内原にとって、聖書は政治的次元を指し示していた。それは、イエス・キリストの再臨による「神の国」の到来である。彼は、絶対的な正義や愛が実現する「神の国」の使信を受け継ぎ、自ら預言者的役割を担い、日本の帝国主義、ファシズム、不義や人権侵害に果敢に立ち向かったのである。
以下は、目次です。
第一章「矢内原忠雄のプロフィール」
第二章「矢内原忠雄の内村鑑三継承」
第三章「大正デモクラシー時代の政治思想」
第四章「矢内原忠雄の帝国主義批判」
第五章「矢内原忠雄のファシズムとの戦い」
第六章「戦時下における抵抗と順応」
第七章「矢内原忠雄の戦後民主主義論」
第八章「矢内原忠雄の絶対的非戦論」
第九章「戦後における矢内原忠雄の国体論」
終わりに 「矢内原忠雄の遺産」
古賀敬太著『28名の著名人と聖書』(伝道出版社、2021年)
本書は、28名の著名人が聖書に向き合い、どのように聖書を読んだかを聖書的視点から描いたものである。
28名の著名人の名前
【日本】(16名)
1「高山右近(1552-1615)と聖書ー時代に抗して生きるキリシタン」
2「細川ガラシャ(1563-1600)と聖書ー細川ガラシャはなぜキリシタンになったのか。」
3「福沢諭吉(1835-1600)と聖書ー神は創造主である」
4「渋沢栄一(1835-1901)と聖書ーイエス・キリストの復活」
5 「新島襄(1843-1890)と聖書ー新島襄は聖書をどのように読んだか」
6「内村鑑三(1861-1930)と聖書ー罪との格闘とイエス・キリストの十字架」
7「夏目漱石(1867-1916)と聖書ー人はどこからきて、どこにいくのか」
8 「有島武郎(1878-1923)と聖書ー与える愛と奪う愛」
9 「芥川龍之介(1892-1927)と聖書ー闇の中に輝く光」
10「太宰治(1904-1948)と聖書ー私は山に向かって目を上げる」
11「八木重吉(1898-1927)と聖書ー神を呼ぶ赤ん坊」
12「岩橋武夫(1898-1947)と聖書ー光は闇より」
13 「林文雄(1900-1947)と聖書ーハンセン病患者と共に」
14 「水野源三(1937-1984)と聖書ー悲しみよ、ありがとう」
15「 藤林益三(1907-2007)と聖書ー最高裁判所長官として」
16 「速水優(1925-2009)と聖書ー日銀総裁として」
# 【西欧】(12名)
1「ブレーズ・パスカル(1623-1663)と聖書ー人間は考える葦である」
2.「ダニエル・デフォー(1660-1731)
A 『ロビンソン・クルーソー』ー孤島での経験
B 『ペスト』ー極限状況における悲惨と希望
3 「チャールズ・ディケンズ(1812-1870)
『クリスマス・キャロル』ー人は変わることができるか
4セーレン・キルケゴール(1813-1855)
『死に至る病』ー絶望から
信仰へ
5フョードル・ドストエフスキー(1821-1881)
A 『罪と罰』ー神が存在しなければ、すべてが許される
B 『カラマーゾフの兄弟』ー罪の赦しの権威を持つキリスト
6 マーク・トウェイン(1835-1910)ー『人生の五つの恵み』ー最も大きな恵みは死?
7オー・ヘンリー(1862-1910)
A 『賢者の贈り物』ー最高のプレゼント
B 『最後の一葉ー犠牲の愛
8 ルー・ウォーレス(1827-1905)
『ベン・ハー』ー復讐から愛へ
9ヘンリク・シェンキェヴィチ(1846-1916)
『クオ・ヴァディス』ー主よ、どこに行かれるのですか
10 サン=テグジュべリ
(1900-1944)
『星の王子さま』ー身に見えないものの大切さ
11 ヴィクトール・フランクル(1905-1997)
『夜と霧』ー人生のコペルニクス的転回
12 ミヒャエル・エンデ(1926-1995)
『モモ』ー奪われた時間の回復
古賀敬太著『近代日本プロテスタント史の政治思想ー内村鑑三、植村正久、海老名弾正の足跡』(風行社、2024年)
本書は、札幌バンドの内村鑑三、横浜バンドの植村正久、熊本バンドの海老名弾正の足跡をたどりつつ、明治から第二次大戦に至るまでの日本のプロテスタント史の光と影を検討したものである。本書は縦軸として、三人のキリスト教思想を、特に自由主義対福音主義の対立として知られる植村ー海老名論争、また再臨をめぐる内村ー海老名論争をとりあげ、三人の神学的位置を画いた。と同時に横軸として、三人が、当時の排他的な国体思想や日清、日露、第一次大戦に対していかなる政治的立場をとったかを追跡した。三人は、二中戦争が始まる前にすでに死去していて、ファシズムを経験することはなかった。本書の構成は以下の通りである。
目次
はじめに
第一章 三つのバンドの成立とその特徴
第一節 横浜バンド
第二節 熊本バンド
第三節 札幌バンド
第二章 不敬事件をめぐる各バンドの対応
第三章 国体とキリスト教をめぐる論争
第四章 新神学をめぐる論争
第五章 正統的神学と自由主義神学──植村正久と海老名弾正の神学論争
第一節 福音主義とは何か
第二節 海老名弾正の新神学
第三節 植村-海老名論争
第四節 宮川経輝と小崎弘道
第五節 自由主義神学の影響の結果
第六節 内村鑑三の植村・海老名に対する評価
第七節 内村鑑三と植村正久
第八節 内村鑑三と海老名弾正
第六章 日清戦争の勃発
第一節 日清戦争の経過
第二節 内村鑑三と日清戦争
第三節 植村正久と日清戦争
第四節 海老名弾正と日清戦争
第七章 藩閥政府批判
第一節 プロテスタント指導者と佐幕派
第二節 内村鑑三の藩閥政府批判
第三節 植村正久の藩閥政府批判
第八章 足尾鉱毒事件
第一節 内村鑑三と足尾鉱毒事件
第二節 内村鑑三と幸徳秋水
第三節 内村鑑三と田中正造
第九章 日露戦争の勃発
第一節 日露戦争に至る経過
第二節 内村鑑三と日露戦争
第三節 植村正久と日露戦争
第四節 海老名弾正と日露戦争
第一〇章 韓国併合
第一一章 大逆事件の衝撃
第一節 大逆事件と内村鑑三
第二節 大逆事件と植村正久
第三節 大逆事件の影響──石川啄木と森鴎外
第四節 幸徳秋水の『基督抹殺論』
第一二章 内村鑑三の再臨運動とその批判
第一節 内村の再臨信仰の形成
第二節 聖書全体において再臨が占める位置
第三節 再臨運動
第四節 再臨反対運動
第五節 海老名弾正の再臨論批判
第六節 植村正久の再臨論批判
第一三章 大正デモクラシーに対する対応
第一四章 内村の無教会主義対植村の教会主義
第一五章 関東大震災の発生
第一六章 排日移民法案批判
第一七章 宗教法案に対する対応
第一八章 日本的基督教
第一節 海老名弾正と日本的基督教
第二節 矢内原忠雄の日本的基督教批判
第一九章 基督教団の成立と戦時下におけるキリスト教迫害
我々はエキスパート集団である以上に、情熱とスキルを持って力を発揮する、同じ志を持つ同士といえます。
自分がこの分野でのエキスパートになれたのは、皆の助けがあったからこそです。それが志を同じにする仲間たちと、情熱とスキルをもって新しいムーブメントを生み出す仕事に携わる理由です。
ここで自分についてや事業内容、特筆したいポイントなどを紹介しましょう。長くなりすぎないよう簡潔にまとめるとよいでしょう。